愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2022-10-05から1日間の記事一覧

山居 萩原朔太郎

八月は祈祷、魚鳥遠くに消え去り、桔梗いろおとろへ、しだいにおとろへ、わが心いたくおとろへ、悲しみ樹蔭をいでず、手に聖書は銀となる。

感傷の手 萩原朔太郎

わが性のせんちめんたる、あまたある手をかなしむ、手はつねに頭上にをどり、また胸にひかりさびしみしが、しだいに夏おとろへ、かへれば燕はや巣を立ち、おほ麦はつめたくひやさる。ああ、都をわすれ、われすでに胡弓を弾かず、手ははがねとなり、いんさん…

下り簗

また違ふ香水過る夜会かな 吉田千嘉子 うしろよりよき風のくる土用灸渥美尚作 朝の蝉井戸の周りの濡れて居て 栗原憲司 河馬がばと炎天の水割りにけり 谷口智行 円陣を組んで噴水立ち上がる 頓所友枝 巡礼のリュックをおろす泉かな 大北昌子 子の肩のてんたう…