愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

短歌

紫陽花の白珠をなせり初夏の海見つつゆく君の横顔

mother road

プーチンのマスクをせざる面構へ侵攻ののち翳ることなし 篠弘 鬼房の「何処ヘ」「宵闇のいかなる吾か歩き出す」 時ならず晩年に入り鬼房の「いかなる吾か」の句を自問する 同上 みづからの本音を述べむ折も折まづおべんちやら口にして居る 同上 会員の電話を…

紫荊の実

依頼者と方針合はぬ夜や幾度寝返りしても心昂ぶり 上司より命ぜられたる初仕事 依頼者の指示の誤り指摘して口論となるその夜眠れず

冬の月

みちのくのやまの出湯に一夜寝てはかなきゆめをわがみたるのみ 小池光 あけつぱなしの手は寂しくてならぬ。青空よ、沁み込め 前田夕暮 明るさに怯むほどなり人声も光を帯びて空を行き来す 伊藤一彦 学徒出陣七十五年後の今日この日の寧けき空に後の月見つ 橋…

土屋文明

刺身にもなるとこんにやく買ひくれぬ下野は楽し我が隣り国

土屋文明

一瞬に亡ぶる水爆をかぶる夜の来るといふのか来ないといふのか

寺山修司

新しき仏壇買ひに行きしまま行方不明のおとうとと鳥

冬の月

砂つみて去りゆく舟の上にして炎は人の間よりみゆ 土屋文明 杉の下に寺あることの変らねば落ちたる水のとはに清しも 同上 谷いでてここにせせらぐ水の声一夜ねむらむたのしかりけり 同上 雨のふる小野をひねもす見て居りぬ暮方になりて光さしたり 同上

立冬

柳吹く九月九日君を訪ふあるひは永きわかれかなしみ 土屋文明

秋惜む

わが馬酔木ほの紅ににほひ来て朝なあさなのたぐさなかりけり 春暑き午後の光のてりつけて青草の土手に潮みちたたふ 向ふ岸に淡き夕日のさし居りて草に満ちたる潮に下りゆく 東みなみの空に浮く雲かがやきて東みなみの風は吹くかも 以上 土屋文明

若山牧水

春真昼ここの港に寄りもせず岬を過ぎて行く船のあり

福島泰樹

悲しみは翠をなすもまたしても色変えてゆくあじさいの朝

青松輝 丸田洋渡試論 を読んで 雑感

別のところでみる夢-丸田洋渡試論 - アオマツブログ (hatenablog.com) 面白い試論だった。俳句における新人賞の扱いはどうなのか? 生活感が顕わな作品は飽和状態で,受賞を逃す傾向にあるとまでは言い過ぎか。 夢的なものは,わからない,理解を拒絶している…

アマリリス

若葉には春が詰まつているのかも萌黄青竹千草若苗

 中城ふみ子

白き海月にまじりて我の乳房浮く岸を探さむ又も眠りて

ブログとも題材似ている? 三十一文字 世界を切り取る「短歌」の世界

ブログとも題材似ている? 三十一文字 世界を切り取る「短歌」の世界 - 週刊はてなブログ (hatenablog.com) はてなブロガーの短歌 25選 id:ohnosakikoさん あたらしい首輪は軽い 拘束と愛の違いをだれか教えて あたらしい首輪は軽い 拘束と愛の違いをだれか…

君を追ふ砂踏む足の洗はれて船笛遠し春の渚は

聞き返す母のいのちのながさかな白色灯のしづかな唸り 聞き返す母のいのちのながさかな白色灯の微かなうなり

ウラジオストク

日本より最も近きヨーロッパ極東の花ウラジオストク

三好達治

春の岬旅のをはりの鷗どり浮きつつ遠くなりにけるかも 「山なみとほに」 山なみとほに春はきて こぶしの花は天井に 雲はかなたにかへれども かへるべしらに越ゆる路

窪田空穂

為べき用傍におきて、眼をそむけ空を見るなり、見る空はたのしとはあらず、為べき用しばし忘るる楽しさに 鳴く蟬を手握りもちてその頭をりをり見つつ童走せ来る 鳳仙花ちりておつれば小さき蟹鋏ささげて驚き走る 『鏡葉』より

この先のわが楽しみも苦しみも逝きし母とは分かち合うなし

焼骨

この骨がどこの骨とかどうでもいい母が帰ってくるはずもなく

この装置外せば母は生きられぬ今宵も髪を撫でつつ眠る

「延命はしない」と母の言ひにけりハイビスカスに沖よりの風

ハイビスカス

延命はしないと母の告げにけりハイビスカスの日を浴びて咲く 延命をしないと母の言ひにけりハイビスカスの日を享けて咲く

連山と桜吹雪を見るたびに母ありし日と思ふのだらう

この先も桜の花を見るたびに母ありし頃と思ひつるらむ この先も枝下桜を見るたびに母ありし頃と思ひつるらむ この先も枝垂桜の散るたびに母ありし日と思ひつるかも

三月十一日に学生を見て思う

寝転びて語らふ夢や川音のさやかに芽吹く白木蓮の花

毎日を母と話さむ花苺 膝に寝る子の入園も初恋も母は見られず春の三日月 膝に寝る子の卒業も初恋も母え見ざらむ春の三日月 月明に苺の花の散るごとし 膝に寝る子の卒業も初恋も母は見ざらむ春の三日月