愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

窪田空穂

為べき用傍におきて、眼をそむけ空を見るなり、見る空はたのしとはあらず、為べき用しばし忘るる楽しさに

鳴く蟬を手握りもちてその頭をりをり見つつ童走せ来る

鳳仙花ちりておつれば小さき蟹鋏ささげて驚き走る

『鏡葉』より