愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

襟に挿し蘂うつくしく茶の匂ふ 水原秋桜子

ハンカチに星座刺しをり避暑乙女 岡田貞峰

肩の上の銀河浴むごと高嶺の湯 同上

十六夜の落葉松は枝重ね合ふ 根岸善雄

旅に出たし秋空を風渡る日は 小野恵美子

夜の秋の一語を交す昇降機 同上

人呼びに行く間に消ゆる春の虹 緒方満洲

水温む背伸して居る猫と居て 同上

手さげより顔のぞかせる春の猫 同上

永き日や手をもてあます手長猿 同上 

熟柿一つ天辺にある余生かな 同上 

碁敵と無言のままの暑さかな 同上

先ず皆に座つてもらひ屠蘇を受く 同上

更くる夜はだまつて雪に変りをり 同上

日向ぼこ考えることなにもなく 同上