愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

枯・冬菜

日輪のがらんどうなり菊枯るる 橋本鶏二

枯蓮の水来て道にあふれたり 久保田万太郎

蓮枯れて水に立つたる矢の如し 水原秋桜子

枯蓮にてのひらほどの水残る 三村純也

冬菜洗ふあたりの濡れて昼の月 松村蒼石

しみじみと日のさしぬける冬菜かな 久保田万太郎

人のかげ冬菜のかげとやはらかき 桂信子

火の山の高曇り居し冬菜かな 吉田鴻司

砂丘きて負籠の中の冬菜青し 森澄雄

絹の道なべて日当る冬菜畑 市橋千翔

雲に雲のせて明るき冬菜畑 小川江見