愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

冬菜

白菜を抱へゆく肘やはらかく 石原舟月

大白菜かがやく芯に刃を入るる 村田脩

葱白く洗ひたてたるさむさかな 松尾芭蕉

葱の香に夕日の沈む楢ばやし 飯田蛇笏

葱屑の水におくれず流れ去る 中村汀女

下仁田の土をこぼして葱届く 鈴木真砂女

葱を引き真澄の空の下と思ふ 村越化石

子を負ひて日の沈むまで葱洗ふ ながさく清江

ことごとく折れて真昼の葱畑 鷹羽狩行

葱抜くや人をはるかとおもひつつ 山上樹実雄

抜きん出て夕焼けて居る大根かな 中田みづほ

大根を刻む包丁の音つづく 山口誓子

大根を抱き碧空を見てゆけり 飯田龍太

人参甘く煮て独りにもなれず 坂間晴子