愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

「アテネに死す」マックス・フリッシュを読む

アテネに死す https://www.amazon.co.jp/dp/4560042810/ref=cm_sw_r_awdo_2M5EDVXJZGRH180WDW2W

 

オイディプスは自己悲劇的過ぎる。暗夜行路は楽観的すぎる。より具体的であるが、ひとつの典型的な現代人の型としての象徴をつくっての意識の流れてきな書き方。
後半におけるアテネ以後のミステリー的な仕掛けの作り方は読ませる。
ただ、どうしてもそこまで過去やザベートに固執するはずがないから、違和感がぬぐえない。ザベートはそういう意味で、ファーベルにとってロリータではない。
だが、現代において自己とは何なのか、ということを考える上で、カフカの「城」などと並んで、ひとつの重要な小説かもしれないなと思う。