愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

つくつくしまた問ふ母へまた応ふ 岡崎郁

捕虫網野の風を追ひ兄を追ひ河野由美

引き返すことなき徑や草蛍 近藤悦子

稲妻や山一斉に立ち上がる 藤田和代

十六夜のしづけさに在る己が影 岩本水霜

糸底の手触り重き夜の秋 須川てる子

手の皺を笑ひ合うては麦酒注ぐ 山本敏

やがて消ゆる夕焼に置く椅子一つ 下田美津子