愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

じゃがいもの花

日の幹に触るる人見てあたたかし

関根誠子

風光るひかりて人を浚ひゆく 同上

雪代の行方あはうみ余呉の湖 依田善朗

百年に一つ歳とる雛かな 同上

紙雛匣開け直し納めけり 同上

みづうみの残照へゆく春の鴨 名取里美

類題を嵩より探す寒灯 鶴岡加苗

底冷の床にテキスト叩きつけ 同上

子の言葉たしなめ凍つる夜なりけり 同上

偏差値は正しき数字クリスマス 同上

どの子にも光卒業写真かな 白石久美子

指までも幸せさうに毛糸編む 西村孝子

笑ひ声きこえて草を焼いてをり 高浜虚子

あをうすき天たうきびの花も声 岡田一実

浮草を押し分け泡の浮き出づる 同上

光陰の陰は月光白牡丹 山田譲太郎

六月の水もて父の墓に立つ 井上論天