愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

夏足袋の高らかに踏む足拍子 加島葉子

深吉野に立夏の笛を吹き鳴らす山口素基

深吉野や鮎を開きて月に干す 同上

夕蝉の金色の聲ひびきけり 同上

草刈られ風は浮力を失へり 大橋嶺彦

赤んぼの手足のくびれ玉の汗 甲斐ゆき子

下北の潮の香の濃き山背風 布施協一

雷鳴にさへ岬馬の動かざる 同上