愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

『山籟』平手ふじえ を読む

『山籟』は平手ふじえの第一句集。序句 中西舗土 跋 藤本美和子 「雪垣」同人、「泉」会員。

前田普羅研究をライフワークとする。俳人協会栃木県支部支部長。半生を見る思い。角川書店。2022年 立秋忌が奥付の発行日となっているのも心憎い演出。

風の音高嶺に集め木花咲く

笛の子の白き肘張る宵祭

冬近し滝の骨格見えて来し

サルビアや昼闌けて啼く放ち鶏

白鳥来あまつくもゐの匂ひして

母は掌に陽射しころがす寒の入

半跏趺坐天衣の襞の涼しさよ

蛇苺山籟ひたと止むところ 

嬬恋の山の匂ひの白雨かな

甲斐駒と光りあふ里柿吊す

柚子湯出てものわかり良くなりにけり

汐留の万の灯を漕ぐ月の船

八溝嶺へ雲走る日や子持鮎

年の火や毛野の連嶺楯として

根上りの松の竜鱗淑気満つ

本著は著書より寄贈を受けました。記して感謝致します。