愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

弓張月

青蘆の風分け行けり調教馬 小森泰子

大漁旗先頭に立て盆踊 植田桂子

息づかひ拾ふマイクや盆踊 同上

手花火に父似の顔の浮かびけり 兼久ちわき

岩礁に砕くる波や夜光虫 斉木永久

白樺の影被て涼し野外弥撒 渡会昌広

青萩の躙り口まだ濡れてをり 大上充子

あかね雲星合の夜を燃えたたす 同上 

日を撥ねて風の重たき大でまり一民江

瑠璃蜥蜴走りて青き風残す 同上

玉虫のとびゆく空や藍深く 同上

揚花火待つ昂りの舟の揺れ平田はつみ

海の鼓動素足に踏める砂丘かな 間宮あや子

蹲の空みづみづし四十雀 徳井節子

水無月の波畳まれて座禅堂 同上

踊り見にゆく母の歩のゆるやかに 石本百合子

竹伐って天に一穴穿ちけり 土屋啓

朝顔の裂けて大きな風誘ふ 大谷昌子

三伏の夢に重さのありにけり 同上

消灯のあとの小さな秋灯 同上

島唄の流れてゆきし天の川 城台洋子

二歩目より吊橋揺るる涼しさよ 伊藤ふみ

雲の峰練習船の帆の鳴りて 小坂優美子

鹿島槍の槍にこぼれて星涼し 河野亘子

胸に受け笹の香青き鉾粽佐藤保子

 


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