鈴虫や闇の舞台をほしいまま 大高霧海
馬追のみどり透くまで鳴き通し 及川茂登子
初萩のしだれはやがて白き風 佐々木青柚
馬柵いつか花野の柵となつてをり朝雄紅青子
それぞれに違ふぬくもり秋灯 渡部美知子
金継ぎの金の細さよ二日月 辰巳奈優美
野分晴鼻を寄せ合ふ岬馬 越後則子
寝返れば本に頭や獺祭忌 松浦敬親
地平より夜の沁み出す無月かな 河内文雄
名月を仰ぐや野良着脱ぎながら 中川雅雪
中天の月に屋根反る阿弥陀堂 高崎公久
草木の匂ひ立ちくる今日の月 小泉展子
峠茶屋焼きたうきびの香の親し 鈴木典子
一列の一斉下校貝割菜 中野元太郎
コスモスに首といふものあるやうな 河原地英武
刈り上げてなほ草の色いわし雲板垣美智子
秋刀魚焼く煙にひそむ波の音 藤岡貞夫
常念岳の裾まで晴るる帰燕かな徳井節子