愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

俳句カレンダー2022101112

象の背な越えて広場に小鳥来る 藤井圀彦

鶺鴒の早瀬の石に彈みけり 金沢伸展

ふるさとの青空連れて小鳥来る 高橋康代

虫送る火のしんがりに神の闇 百合山真苗

秋の雲よりへら鮒の釣られけり高宮義治

萱の穂の濡れ色風を離さざる 良知悦郎

白山へ一礼をして松手入 村田浩

をちこちに夕日の余熱からすうり 谷口いづみ

月光の溶けて居るなり崩れ簗 宮尾直美

藁塚の頂点ほぐれたる日暮 佐怒賀直美

どんぐりの拾はれたくて落つる音 白岩敏秀

大熊手かつぎ花道ゆくごとし 広渡詩乃

裸電球の影のふくらむ三の酉 松永富士見

擦り抜けて塾へ通ふ子一の酉 佐渡谷秀一

歩くほど十一月のしづかなる 緒方敬

声そろへ鐘を鳴らして冬安吾 上田正久日

神迎へ終の栖の梁きしむ 細川玲子

襖絵の虎の咆哮冬ぬくし 小澤昭之

透けて居る餃子の餡や年忘 三神沙生

アダムよりエヴァの背高し聖夜劇 渡部有紀子

ポインセチアひとに一途でありし頃 中島悠美子

日の残る窓を曇らせ柚湯かな 三澤俊子

雲水の一列にゆく雁木道 久永のり尾

海の底まで透けて若狭の海鼠突 浜福恵

海彦と遊ぶ勇魚の潮けむり 近藤暁代

空席は風の席なり里神楽 渡井恵子

青空を海に拡げて十二月 保木本さなえ