『膝抱いて』は星揚子の第一句集。白魚火同人。俳人協会栃木県支部事務局次長。 序 白岩敏秀 跋 星田一草 15句抄。懇切丁寧な序文に言い尽くされているように思うが、よく見ての発見とそれを確かに言い止める表現の的確さがある。切字と比喩、副詞が特徴か。
啓蟄の覗きたくなる土管かな
燕飛ぶ空を飛び出しさうに飛ぶ
風鈴を全部鳴らして店開く
親の顔飲み込みさうに燕の子
羽畳み星の定まるてんと虫
ところどころ固まつて滝落ちにけり
茶の花やくるりとまろむ鉋屑
蟻動く影を落とさぬ速さかな
汗の手を握り試合の終はりけり
時の日の鏡の中の私かな
毛糸編む指先に日を絡ませて
膨らます風船顔に近づき来
手前より奥がゆつくり雪降れり
炎天や白杖軽く地を叩く
地に届きたれば月光氷りけり
本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。