愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

『膝抱いて』星揚子(2022年.本阿弥書店)を読む

『膝抱いて』は星揚子の第一句集。白魚火同人。俳人協会栃木県支部事務局次長。 序 白岩敏秀 跋 星田一草 15句抄。懇切丁寧な序文に言い尽くされているように思うが、よく見ての発見とそれを確かに言い止める表現の的確さがある。切字と比喩、副詞が特徴か。

 

啓蟄の覗きたくなる土管かな 

燕飛ぶ空を飛び出しさうに飛ぶ

風鈴を全部鳴らして店開く 

親の顔飲み込みさうに燕の子

羽畳み星の定まるてんと虫

ところどころ固まつて滝落ちにけり

茶の花やくるりとまろむ鉋屑

蟻動く影を落とさぬ速さかな

汗の手を握り試合の終はりけり

時の日の鏡の中の私かな

毛糸編む指先に日を絡ませて

膨らます風船顔に近づき来

手前より奥がゆつくり雪降れり

炎天や白杖軽く地を叩く

地に届きたれば月光氷りけり

 

本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。