『雁のころ』は木野泰男の第一句集。春野同人。俳人協会会員。 序 黛執 跋 奥名春江 15句抄。
春浅しかもめは羽を光らせて
菜の花や堤の先の町暮れて
どの田にも水たつぷりと桐の花
保線夫の掛け声揃ふ竹煮草
山の端に釣瓶落しの空残る
寒落暉一朶の雲を燃やしつつ
水まるく堰を越えゆく暮春かな
鰡跳んで河口に潮の押し合へる
野良声の割り込んで来る焚火かな
遠き灯の迅き瞬きも雁のころ
紙を折るやうに波寄る暮春かな
子の声の朝から高き大暑かな
あめつちの間明るし秋燕
みぎはまで石段続く雁渡し
馬小屋に馬の影なき夏の月
本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。