『毛の国の』は星野乃梨子の第一句集。運河同人。 序 茨木和生 15句抄。俳人協会栃木県支部事務局次長。
栗の花少年飛込台蹴つて
黒揚羽熊野の闇を剥がれ飛ぶ
暮れてなほ冬雲陸のごとくあり
草の絮真昼の月と気づくまで
綿虫を胸の高さに見失ふ
対岸の野火音もなく立ち上がる
若鮎は月の光に遡る
一斉に鳩は光へ七五三
耳朶厚き仏彫りけり朴の花
口紅の折れてしまひし近松忌
畳拭き上げ夕立の音軽し
耳朶につけたし寒の三日月は
草虱剥ぐふりをして触れてみる
改札にずつと手を振る夏帽子
火の神となれる校長キャンプの夜
本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。