愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

今田清三句集『岩桔梗』(私家版)を読む

『岩桔梗』は今田清三の第三句集。馬酔木同人。俳人協会会員。  15句抄。

まだ白き富士をマストに海開

岩桔梗紫紺いちづに亨の忌

雪渓のひかりを天に群青忌

駒鳥や山田あまねく水湛へ

竜胆や雲つかむごと岩梯子

立冬や天透きとほる分水嶺

どの日々もたふとし介護日記果つ

匂ひ立つ闇ほのぼのと梅真白

鶏頭のくれなゐ深し震災忌

菊の香やことにゆつくり車椅子

虫しぐれ記憶なくせし人に添ひ

波音をかぶる天窓寒造

山の夜は山を語らひ夏炉燃ゆ

しろがねの常念岳統ぶる天の鷹

なほ白き富士天心に利休の忌

本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。