愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

滝令和五年二月号より

 

鳴りながら冬の風鈴おろされぬ鈴木花明

バレリーナの背のやはらか十二月 芳賀翅子

小六月犬に生れて犬と居る 栗岡信代

寒菊や微かに残る飛行音 鎌形清司

黒波の浜に合掌冬たんぽぽ 八島敏

凍滝の内に秘めたる流れかな 阿部華山

たましひはいつも枯野に置いたまま 谷口加代

耳飾り痛き青畝の忌なりけり 遠藤玲子

流れゆくものに別れや浮寝鳥 赤間

パーキンソン病の義父よ

雪踏みにける振戦の身を乗せて 成田一

翔さんの居ぬ前列に悴めり 同上

海底の無音を思ふ冬の薔薇 石母田星人

凍滝の星のつぶやき鬨也の忌 今野紀美子

天翔る支柱の如く滝凍つる 阿部華山