愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

いぶき 令和五年二月号より

机ひとつ寝台ひとつ冬の月 黒田杏子

木枯しや夢の続きを夢で見る 今井豊

悼む 友岡子郷氏

雁や泪こぼさず訃報聴く 中岡毅雄

吾亦紅短く弔意つたへつつ 同上

すこしづつ悼むこころや草の花 同上

つぶやきにかよふさびしさ冬の綿 同上

鶏頭や流れて雲の形なさず池田喜代持

鶏頭や紅引く妻を納棺す 同上

鶏頭の葉裏のことに濃かりけり 同上

雨あがる日の鶏頭の燃え立ちぬ 同上

鶏頭や寧日なきにすでに慣れ 同上

どこで咲く黄泉比良坂鶏頭花 同上

鶏頭の枯れをる愚直愛すべし 同上

鶏頭やにはかに人の声欲しき 同上

父を看る母を見て居る秋茜 畝加奈子

さざなみに光さすらふ晩夏かな 滝川直広

ゴシックの女のごとく黒揚羽 同上

独り言叫ぶ人あり聖五月 羅賢楼