愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

晦日蕎麦

金星から見ると この地球は

どんなふうに見えるのだろう 

やはり空のなかほどに一つだけ

凍りつくようにふるえているのか

身内の闇をもゆり動かす星の瞬きは

孤独な天体同士が交わす通信だろうか

心のうちにバッハのオルガン曲が流れ

小川のせせらぎに水草がゆらぐ映像が

網膜のスクリーンにくりかえし浮かぶ

風は地面からしずかに湧き起こり

麦畑をまっすぐに吹き分けていく

高柳誠


f:id:inamorato:20240101102336j:image