愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ザリガニ釣

星ひとつ出れば星空夏料理 野中亮介上蔟や澄みて膨らむ山の月同上

佐川仁一

甲斐駒の水田鏡に夏立てり 山本雅子 叱らるることに馴れをり火取虫 近藤暁代 鳥海山の雲ほぐるるや田植花小森泰子 宿の灯の消えて螢の川となる 長谷川祥子 軽鴨の子の水輪を重ね母を追ふ同上 戻したき月日ありけり捩花同上 夜半覚めて心音を聴く五月闇貞吉佑…

小島酒造

山法師小さき鳥のよく唄ふ石田阿畏子 尾根越えし霧の満たせるお花畑 服部鹿頭矢 二上は日の入るところ田植終ふ 同上 雲焦がす入日に染まり花蜜柑 長谷川閑乙 空に星点るや水に蛍舞ひ 同上 生も死も同じ安らぎ緑の夜 太田昌子 見たる夢誰にも告げず更衣同上

錦糸橋

燭台にたまる蝋涙梅雨入かな 西村博子 子の料理早くて旨し梅雨晴間 永峰久比古 囲まるる童女が師匠草の笛 藤野力

大西朋

口開けて鯰のたくる草の上 波の音聞きつつ復習ふ祭笛 あめんぼに張り詰めて居る水面かな

古文書を吹く風にほふ胡麻の花 水原秋桜子 黒日傘くるくるくると人は来ず 徳田千鶴子 摘み残るタラの芽高し夕浅間 岡田貞峰 御岳を蹴上げて育つ木曽子馬 同上 万蕾の雲にふふめり嶺桜 同上 森五月樹頭に白き花綴り 渡邊千枝子 ミモザ照り航くとも見えぬ沖の…

源流は雲踏むところ大瀑布 滝の音滝の音滝まだ見えず 魚籠の鮎跳ねつつ山雨来りけり 堀本裕樹 心臓を掴まれさうな大瀑布 青空を引き込む滝の白さかな 神の大腿骨として瀑布かな

山田真砂年

できたての湯葉の甘さよ山眠る どぢやう鍋悪事企むこと楽し 辞書入れて残暑の重さ革鞄 汗の顔力抜くとき笑ひとなる みささぎの水に育ちし稲を刈る 水澄んで影たひらかに湖国かな 雪道の汚れはじめて村に入る 抑へても肩が笑へり黄水仙 降参のごとく手袋干さ…

風鈴

風鈴の空は荒星ばかりかな 芝不器男 風鈴の遠音聞こゆる涼しさよ 日野草城

私と俳句

この度、エッセーを書かせていただくことになりました。平成十八年卒です。幾つかの若手向けの俳句コンクールでの入賞を機にお声をかけていただきました。お目汚しにて恐縮ですが、今回は「私と俳句」について書かせていただきます。 まずは同窓会報らしく、…

人は今むらさきふかく草を干す 篠田悌二郎 芒原枯れて光れり人に逢はず同上