愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

筑波山

昼寝覚うつしみの空あをあをと 川端茅舎 桑畑を山風通ふ昼寝かな 松本たかし 昼寝覚凸凹同じ顔洗う 西東三鬼 わくら葉を指にひろへり長やまひ 日野草城 しろがねの水蜜桃や水の中 同上

煙突の林立静かに煙をあげて戦争の起りそうな朝です 橋本夢道 御嶽山の水を分かちて馬洗ふ 河野亘子

小林秀雄「当麻」

美しい花がある。「花」の美しさというようなものはない。

「論語」雍也第六21

子曰わく、知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり、知者は楽しみ、仁者は寿し。 子曰、知者楽水、仁者楽山。知者動、仁者静、知者楽、仁者寿。

西瓜

レシートの舌長々と梅雨の底 藤井明子 諸鳥や五月の森の芳しき 間宮あや子 白南風や鷗連れ来る大漁旗土屋啓 指指して星の名を言ふ露台かな 市村健夫 悼 長谷川翠先生 翠黛の山に涼しき月上る同上

広渡敬雄『間取図』(2016年、角川書店)を読む

『間取図』は広渡敬雄の第三句集。俳人協会幹事。「沖」同人。十五句抄。 蛇ゆきし草ゆつくりと立ち上がり 裏返りつつ沢蟹の遡る 滴りのわが脈拍となりゆけり 凍蝶とつぶやく胸にしまふかに 凍滝の中も吹雪いてゐたりけり 腹擦つて猫の欠伸や夏座敷 甚平の飛…

熊谷

水の如く人恋ふことも蛍の夜 ほんだゆき 長谷川翠を悼んで 蛍火のひとつは天にのぼりけり 長谷川閑乙 黒揚羽祈るかたちに翅合はせ同上 大き耳輪ゆらして来るよ更衣 太田昌子

向日葵

星空へまだ温かき熊吊るす 甲斐由紀子 芭蕉布の暖簾越しなる海の音 山本潔 六月の風は海から来て白し 渡邊千枝子