愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

死民たちの春 石牟礼道子

ときじくの かぐの木の実の花の香り立つ わがふるさとの 春と夏のあいだに もうひとつの季節がある

岬 中上健次

死んだ者は、死んだ者だった。生きている者は、生きている者だった。

学問のすすめ 福澤諭吉

進まざる者は必ず退き 退かざる者は必ず進む

黄金比の朝 中上健次

眠りが固まらなかった。眼窩の奥、頭の中心部に茨の棘でさしたような甘やかな痛みがあつた。

冬至

寒垢離に滝団々とひかり落つ山口草堂 ゆめのなかへ道折れてゆく寒念仏 森山夕樹 大樟の走り根焦がす追儺の火 下村ひろし

印象派との出会い

コロー ポロメ諸島の浴女たち ブーダン ボルドー風景 シスレー サン=マメス セーヌ河の朝 モネ セザンヌ 曲がった木 構成の勝利 座る農夫 セザンヌ やはり写実的でなく軸がずれている。 シニャック パリ ボン=ヌフ シダネル 離れ屋 佐伯祐三 ロカション・…

親子

「ただいま」と言えば子ら寄るけふ外に門松飾つた頭を撫でる

紫陽花の白珠をなせり初夏の海見つつゆく君の横顔

鱗 巣鴨 葛飾

八月や時間の狂ふ時計店 福永虹子 砂浜の砂の色して子雀は 岩淵喜代子 海青くまだ咲かぬ薔薇散りし薔薇 高橋啓子 夏雲や船の背負ってくる時間林誠司 爽籟や右から読めば氷川丸 中村暢夫 一筋の道の淑気を踏みゆける 木暮陶句郎 天辺の達磨どんどの火を待てる…

板橋宿

酉の市小さき熊手を値切りけり 正岡子規 曇りきて二の酉の夜のあたたかに 久保田万太郎

フルムーン

大いなる椿一樹がわれとわが妻なりしひとの墓を覆へる 永田和宏 わが歌の初句が出なくて講演のそのあたりより早口となる 同上 チャート式数Ⅰ数Ⅱの広告の前に待ちをり午後の電車を 同上 風つよきランス大聖堂いづこより神の嗚咽はきこえくるかも 水原紫苑 微…

mother road

プーチンのマスクをせざる面構へ侵攻ののち翳ることなし 篠弘 鬼房の「何処ヘ」「宵闇のいかなる吾か歩き出す」 時ならず晩年に入り鬼房の「いかなる吾か」の句を自問する 同上 みづからの本音を述べむ折も折まづおべんちやら口にして居る 同上 会員の電話を…

紫荊の実

依頼者と方針合はぬ夜や幾度寝返りしても心昂ぶり 上司より命ぜられたる初仕事 依頼者の指示の誤り指摘して口論となるその夜眠れず

冬の月

みちのくのやまの出湯に一夜寝てはかなきゆめをわがみたるのみ 小池光 あけつぱなしの手は寂しくてならぬ。青空よ、沁み込め 前田夕暮 明るさに怯むほどなり人声も光を帯びて空を行き来す 伊藤一彦 学徒出陣七十五年後の今日この日の寧けき空に後の月見つ 橋…

冬菊 コスモス

敷松葉さらに雪敷きけがれなし 篠田悌二郎 炭ひとつかがやきこめて胸ともる 同上 炭おこり来るひとすぢのあたたかさ 中村汀女 深く妻の腕をのめり炭俵 能村登四郎 炭焼くや粧ふ山を遊ばせて 百合山羽公 煉炭を悪事なすごと煽ぎをり 小林康治 朝は夫夕のたき…