愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「他ト我」北原白秋

二人デ居タレドマダ淋シ、 一人ニナツタラナホ淋シ、 シンジツ二人ハ遣瀬ナシ、 シンジツ一人ハ堪ヘガタシ。

ヨン・フォッセ『だれか、来る』

Alone together Alone with each other Alone in each other

サミュエル・ベケット『名付けえぬもの』

Where I am,I don't know,I'll never know,in the silence you don't know,You must go on,I can't go on,I'll go on.

立山連峰

鳥声を呑んで地にあり春の雲 加藤暁台

ふくろう 木下夕爾

まいにち まいにち 私の胸まで来て啼いてゐた ふくろうよー あれはとうさんではなかつたらうか

ひばりのす 木下夕爾

ひばりのす みつけた まだたれも知らない あそこだ 水車小屋のわき しんりょうしょの赤い屋根のみえる あのむぎばたけだ ちいさいたまごが五つならんでいる まだたれにもいわない

かしの森公園

孤獨 田舎の白つぽい道ばたで、 つかれた馬のこころが、 ひからびた日向の草をみつめて居る、 ななめに、しのしのとほそくもえる、 ふるへるさびしい草をみつめる。 田舎のさびしい日向に立つて、 おまへは何を覗いて居るのか、 ふるへる、わたしの孤獨のた…

安里琉太『式日』(左右社、2020年)を読む

『式日』は安里琉太の第一句集。「群青」「滸」同人。十五句抄。 悴みて水源はときじくの碧 古巣見てきて雲のおもての暮れすすむ 山霧の粒立つて日に流れをり はんざきはみづを匿ひ十二月 涼しさや石より雲の彫り出され さざなみにプールの晴れてきたりけり …

興禅寺

あふむけば口いつぱいにはる日かな 夏目成美 桶の尻干したる垣に春日かな 夏目漱石 大仏の俯向き在す春日かな 松本たかし 水底にゆく水うつる春日かな 大谷句仏 一人づつすれちがひゆく春日かな 久保田万太郎 ほろ苦き恋の味なり蕗の薹 杉田久女

飛山城跡

何思ふとなく冬夕焼の坂の上 木下夕爾 スケートや右に左に影なげて 鈴木花蓑

冬紅葉

青霧にわが眼ともして何待つや 藤田湘子

俳人協会冬の俳句展、物故俳人展

粕汁や裏窓にある波頭 千田一路 農鳥の翔らんとして大浅間 伊東肇 わが十指われにかしづく寒の入 岡本眸 白絹のつめたさを縫ひ冬あたらし 能村登四郎 寒流として天竜も伏し流る 百合山羽公

2018年の仕事の6割以上は、1940年には存在していなかつた

岸本尚毅『雲は友』(ふらんす堂、2022年)を読む

『雲は友』は岸本尚毅の第六句集。「天為」「秀」同人。十五句抄。 誰か居る虫の闇なるぶらんこに 打ち打ちて皆みまかりし砧かな 風は歌雲は友なる墓洗ふ くつきりと黒々と皆秋の暮 行く道は帰る道なり芋嵐 風向きの海へ煙や焼藷屋 月蝕は月を生みつつ浮寝鳥…

聖樹

スケートの汗ばみし顏なほ廻る 橋本多佳子 綿入の袖口そろふ火鉢かな 篠原梵