愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

身じろげばこぼれむとするさくらかな 轡田進 日と空といづれか溶くる八重桜 渡辺水巴 一二片散りてときには花吹雪 山口波津女 苗代や杏の花の花ぐもり 相馬遷子 海棠の花しづくする甘雨かな 村上鬼城 海棠のはなやぐ空も潮ぐもり 草間時光

岩は皆渦潮しろし十三夜 水原秋櫻子 野遊の心のままにわかれけり 水田むつみ ポンペイの松風を聴き歳逝けり 中村和弘 なみなみと湛ふるものを去年今年 正木ゆう子 初風にもつと自由になればいい 小林貴子

いのちひさしき 三好達治

いのちひさしき花の木もおとろふる日のなからめやふるきみやこの春の夜にかがり火たきてたたへたる薄墨さくら枝はかれ幹はむしばみ根はくちぬみちのたくみも博士らもせんすべしらに枝を刈り幹をぬりこめたまがきにたて札たてて名にしおふ祇園のさくら枯れん…

花ミモザ

手を伸べていづれと摘むにたゆたひぬ笛にと思ふ清き茎草 雲よむかし初めてここの野に立ちて草刈りし人にかくも照りしか 清潔な自然と、対峙しつつ、それにはじらうごとく触れる人間の心を初々しく描く 人物のかすかな心のゆらぎ 内省的心情、神秘との交信、…

辛夷の芽

依頼者と方針合はぬ夜は幾度寝返りしても心昂ぶる

白衣観世音

紅梅や横顔美しき観世音

村上鬼城記念館

休館やないか

スイートピー

雲海のはたてに浮ぶ焼岳の細き煙を空にしあぐる 窪田空穂

窪田空穂

兄川にならぶ弟川ほそぼそと青山峡を流れてくだる

闘病の息知る障子貼り替ふる 水崎ハル子 秋扇をたたみ言葉をたたみけり 高野チカ子 兄弟の水着干さるる色違ひ 井上寿子 ひとり言夫に聞こえて魂送 加藤実穂 甲板を磨く生徒や雲の峰 利國春美

春の雪 pollen

山葵田の湧水迅し暮の秋 松田碧霞 山葵田のたかぶる水音冬隣 同上

瀝 2023年 春 第77号 より

潮鳴の海光に立つ絵踏かな 西嶋あさ子 ある朝の鵙聞きしより日々の鵙 安住敦 どのような問題でも、有季定型でも、一句の良し悪しでも、きちんと向き合って話せる仲間を句会の指導者は持っているだろうかとよく思う。お友達感覚では俳句が悲しむだろうと思う。

三菱ケ原 郡司卯之助

巴里の絵のここに冴え返り並ぶあはれ 水原秋桜子*1 *1:佐伯祐三の生涯に感動して 岩礁

月朧

わが恋は知る人もなしせく床の涙もらすな黄楊の小枕 式子内親王

いぶき 令和五年二月号より

机ひとつ寝台ひとつ冬の月 黒田杏子 木枯しや夢の続きを夢で見る 今井豊 悼む 友岡子郷氏 雁や泪こぼさず訃報聴く 中岡毅雄 吾亦紅短く弔意つたへつつ 同上 すこしづつ悼むこころや草の花 同上 つぶやきにかよふさびしさ冬の綿 同上 鶏頭や流れて雲の形なさ…

奄美大島

ガジュマルの木蔭を風と行くならむ

滝令和五年二月号より

鳴りながら冬の風鈴おろされぬ鈴木花明 バレリーナの背のやはらか十二月 芳賀翅子 小六月犬に生れて犬と居る 栗岡信代 寒菊や微かに残る飛行音 鎌形清司 黒波の浜に合掌冬たんぽぽ 八島敏 凍滝の内に秘めたる流れかな 阿部華山 たましひはいつも枯野に置いた…

節分

大空に根を張るつららだと思へ 櫂未知子 初磐梯裳裾を湖に濡らしけり 佐久間晃祥 初日受く日毎に祈る神の山 岡崎宝栄子 薺打つひとりに余ることばかり 徳田千鶴子 人日の手に頂きて新刊書 望月百代 添ひ寝して子に初夢を蹴られけり 五十嵐かつ 富士見ゆる所…