愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

マザーロード

風花の御空のあをさまさりける 石橋秀野 わが天使なりやおののく寒雀 西東三鬼 いまありし日を風花の中に探す 橋本多佳子 舌頭にとろりと甘き寒の水 高橋淡路女 冬草に黒きステッキ挿し憩ふ 西東三鬼 埋火や思ひ出ること皆詩なり 村上鬼城 埋み火や家ゆすり…

冬の月

すべてのものにはひびがある。 そしてそこから光が差し込む。 レナード・コーエン

銀杏散る

塩鮭をねぶりても生きたきわれか 室生犀星 雪晴のひかりあまねし製図室 篠原鳳作 よく光る高嶺の星や寒の入 村上鬼城 一月や日のよくあたる家ばかり 久保田万太郎 薺爪あとより紅をさしにけり 青木月斗

銀杏散る

しら珠の数珠玉町とはいづかたぞ中京こえて人に問はまし 山川登美子

リヒャルト・ワーグナー

仕事をやるなら、上機嫌でやれ

金子みすゞ

上の雪 寒かろな。 つめたい月がさして居て 下の雪 重かろな。 何百人も乗せて居て。 中の雪 さみしかろな。 空も地面(じべた)もみえないで。

デルムンド

天井の龍身構ふる煤払 岡根谷良臣 百の手が持ち上げ宮の注連飾る 田中和子 マフラーに顔をうずめて待つ返事 馬場﨑令桜 鬼婆も座敷童子もゐろり端 五十嵐暢子 松毬の火玉となりし焚火かな 淺井一志 風音のけふが暮れゆく白障子 池田緑人 鮟鱇のぬかるみのご…

八頭

寺々の中に家ある干菜かな 岡本松浜 聖樹灯り水のごとくに月夜かな 飯田蛇笏 暮れ暮れて餅を木霊の侘び寝かな 松尾芭蕉 冬休とどろに波のひびくなり 久保田万太郎 卵一つポケットの手にクリスマス 西東三鬼 氷魚痩せて月の雫と解けぬべし 正岡子規 初雪やか…

西嶋あさ子『瀝』(瀝の会、2018年)を読む

『瀝』は西嶋あさ子の第五句集。俳人協会顧問。「瀝」代表。十五句抄。 蓮根の穴九つの淑気かな 丹後より丑紅買ひに雪女 降る雪やすぐ香に立ちて胡麻油 降るほどの星をいただき枯木宿 宝恵籠に乗りたやひよいと恋したや 仰向くは燃え立つばかり落椿 花烏賊の…

山中湖

数へ日の月あたたかき夜なりけり 久保田万太郎 枕かへし冬濤の音ひきよせる 橋本多佳子 枯菊や雨きて鶏の冠動く飯田蛇笏 あつものに南瓜の混る冬至かな 島村元

周辺山廬

あららぎのみづかげろふも夏のもの 川音や次第に見えて蜘蛛の糸 雲込めの白花愛しかたつむり 雨粒を涼しく濡らす雨なりけり 翠黛のみづを引き来ぬ洗ひ飯 丘に居て昼のはじまる木槿かな うそ寒のかなへびけぶりやすきかな 霧深く我にしたがふ霧のあり 以上 安…

言葉まだ発せずに居る大旦 片山由美子 声上げて即ちそこに初鴉 西村和子

常磐ホテル

天暮るる綿虫が地に着くまでに 橋本多佳子 水涸れて橋行く人の寒さかな 正岡子規 久方の空いろの毛糸編んでをり 久保田万太郎 風呂吹に杉箸細く割りにけり高橋淡路女 大綿は手にとりやすしとれば死す 橋本多佳子 木の葉髪泣くがいやさにわらひけり 久保田万…

納豆汁

初暦知らぬ月日は美しく 吉屋信子 冬星につなぎとめたき小舟あり 杉山久子 蛇衣を脱ぎ少年の声太る 西村和子 紫陽花や単線海へ出るところ 同上 海紅豆沖はひねもす高曇り 同上 夏日燦うしろ姿の死者ばかり 同上 祭鱧今年は雨をとくと呑み 同上 常夜灯連ねて…

ルブタンの赤い靴底開戦日 東京地裁が「ルブタン」のレッドソールを「一般的なデザイン」と判断 エイゾーコレクションに対する約4200万円の損害賠償請求も棄却 - WWDJAPAN

岡田貞峰『天景』(安楽城出版、2010年)を読む

『天景』は岡田貞峰の第三句集。俳人協会評議員。「馬酔木」顧問。十五句抄。 氷河滝滔々と雲を引き落つる 穂高小屋銀河に倚りて灯を点す 落葉松の琥珀に釣瓶落しの日 白妙の凍鷺は添ふ影もなし 泉声に生れ綿虫の芯あをし 遠雷に絵硝子の使徒蒼く立つ 峠雲垂…

柚子

雪渓に暁光の遠谺かな 松永浮堂 今日入りし港の船もクリスマス 水原秋櫻子 蚯蚓鳴く秩父は山も闇なして 橋本榮治 マニキュアの爪とがらせて冬ふかし 那須淳男 栞とす命名の日の櫨落葉 平子公一 一人づつ渡る木橋や草の花 丹羽啓子 墓碑銘は兄蘇峰の書竹の春 …

ヨシタケシンスケ展

騎初の馬首に天与の星白し 岡田貞峰

マリーゴールド

雪山に雪の降り居る夕かな 前田普羅 雪山を這ひまはり居る谺かな 飯田蛇笏 奉公にある子を思ふ寝酒かな 増田龍雨 空色の水とびとびの枯野かな 松本たかし そのあたり明るく君が枯野来る 西東三鬼

グスタフ・クリムト 生命の樹

残菊

囀や朝空に甲斐駒ヶ岳 嶺治雄 花の雲きりんの首が見えにけり 同上 鶺鴒の波音叩く別れかな 同上 菊を焚くけむりの折れてまたのぼる 宮津昭彦 山茱萸に日差しが咲いて妻の留守 同上 雪代山女湖底の村の上泳ぐ 同上 駒草の震へむとしてやみにけり 同上 ビアホ…

水澄む

例えば画家が絵を描くのは物を見て感動するからだ。生活のためということは別にして、感動がなければ描かないだろう。 かつて梅原龍三郎は富士山を見て感動し、傍らで画を描いている友人に、「もっと大きく富士を描け」と言ったそうだ。そしてその友人が稲を…

嘘にウソ塗り固めれば影よりも闇より黒い躰と心