愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

野中亮介

壇ノ浦上潮尖る葉月かな 木の宿の木の風呂鶉鳴きにけり 豌豆や子がそつと出す通知表 盆提灯たためば熱き息をせり 烏瓜のため一山の涸れ尽くす 寒林に寒林の空映す水 春満月映す漆を重ねけり 少年に男の香あり冬木立 つまさきに力をこめて巣立ちけり 田螺やや…

植田桂子 第一句集『初ざくら』を読む

『初ざくら』は植田桂子の第1句集。序:德田千鶴子 跋:野中亮介 15句抄 花うぐひいのちの色をふりこぼし 茶摘女の産毛ゆたかに唄ひけり 水兵の襟もとすがし五月晴 海女小屋にミシン踏む音あたたかし 子遍路のゆたかなる髪束ね発つ 月見草月を待たずに咲き…

馬酔木第101巻第2号

鼻先を犬に舐められ年男 那須淳男 沸騰のあと湯がしづか春を待つ 西川織子 両の手に包む子の頬雪催 丹羽啓子 武蔵野にふるみちのこり咲くすみれ 水原秋桜子 綿虫や歪みふくらむ遊びの輪 藤野力 ふりだしにもどす話や狸汁 同上 蓮根掘膝の水嵩かき分けて 堤京…

植田桂子

星屑を沖へ傾け葛湯吹く 筑紫野の雲かげ淡し雛の市 とりどりの栞聖書にさくら草 リヤカーに乗る子押す子や麦の秋 紫陽花忌頭上の星の濃くなりて 風鈴や藍の香のこる母の帯 祈る手をほどきて受くる菊の花 冬薔薇ピアノの蓋を固く閉づ 水よりも雲のひかりて初…

私と俳句

「私と俳句」という題を頂いた。春郎前主宰のような軽妙な随筆は到底書けないが、ささやかな自己紹介を書いてみる。 思い返せば幼い頃から活字中毒であった。幼稚園か小学校に入る頃、留守番の間、辞書を読んでいたことがあった。かえって親に心配された。 …

時事通信より 俳人の根岸善雄氏死去

俳人の根岸善雄氏死去:時事ドットコム (jiji.com) 根岸 善雄氏(ねぎし・よしお=俳人)16日午前7時45分、多発性骨髄腫のため埼玉県羽生市の自宅で死去、82歳。同県出身。葬儀は24日午前11時から同市西3の29の14のダイリン羽生きらら会館で…

根岸善雄先生長逝

『塔』第五集 根岸善雄集より 「『青渦』のあとがき」に作句の目標として、「内をつねに勤て物に応ずれば、その心のいろ句となる」(赤冊子)と書いた。この気持ちは今も変らないし、今後も試行錯誤しつつ、模索してゆきたいと思っている。 現在も心がけてい…

穀象

残響のピアノに揺れて室の花 植田桂子 卒業や海原を指す風向計 同上 襖絵の鶴を残して春逝けり同上

正月の凧

みづうみの満月とゆれ残り鴨 田島和生 五月富士裾まで晴れて海に立つ 高橋悦男 雪合戦あの子ばかりを狙ひけり 徳田千鶴子 冬草の青きを踏みて耕二の忌 小野恵美子 一島へ舟を乗り継ぐ御講凪 橋本栄治 美しき声と歌留多を任さるる 野中亮介 大年の潮高鳴り鵜…

七草粥

「月光」 年輪を重ねて夫婦炭を継ぐ 沖雲のかろくなりたる花ミモザ 口紅の濃きが愛しや江戸雛 雛の間や乾く絵筆に紅すこし 春鴨の数だけ風をおいてゆき 以上 植田桂子

初雪

ぶちあてる貨車の連結梅雨の月 那須淳男 網戸入れ青き海風通しけり 長谷川閑乙 網戸入れ夜は深海に在るごとし 平賀扶人 山藤の夜は竜神となりて舞ふ 山本雅子 甲斐駒は天空の山朴咲けり 根岸善雄 この先達の自然詠は、どれも透き通っていて美しく格調が高い…

六日・鬼子母神

寒明の崖のこぼせる土赤く 木下夕爾 遠き春遠きままにて地踏みたり 森村誠一 詩に痩せて二月渚をゆくはわたし 三橋鷹女 葉牡丹の火むら冷めたる二月かな 松本たかし

ボードレール

ダンディとは、生き方の美学を宗教にも似た信仰へと高めるもののこと

五日

川瀬ゆるく浪をおくるや青あらし 飯田蛇笏 汗冷えつ笠紐ひたる泉かな 同上 硯洗ふや虹濃き水のゆたかなる 同上 展墓日暑し玉虫袖をあゆむかな 同上 夏蝶や羊歯ゆりて又雨来る 同上

三日

新雪を踏みしめてゆく今年かな 本年も宜しくお願い致します!

二日

花を揺る上風や夜をふかめつつ 飯田蛇笏 秋草やぬれていろめく籠の中 同上 月さして鴛鴦浮く池の水輪かな 同上

今年

鳥影にむれたつ鳥や秋の山 飯田蛇笏 月いでて雪山遠きすがたかな 同上 薄雪に月出ぬ山は夕日して 同上 氷柱

雑煮

山雪に焚く火ばしらや二月空 月いよいよ大空わたる焼野かな 牧がすみ西うちはれて猟期畢ふ 日影して胸ふとき鶏や芹の水 三伏の月の小ささや焼ヶ岳 以上 飯田蛇笏

初山河

谷々や出水滝なす草の秋 飯田蛇笏