『枯野』は伊藤強一の第一句集。「海光」同人。序・林誠司。十五句抄。
永き日や遠く聞こえるかくれんぼ
膨らんだ麒麟の鼻や夏来る
梅雨明けや平均台のバック転
耳そば立てて白シャツの調律師
十一月クルスに白き日のひかり
指先のあまる手袋咬んで脱ぐ
海鞘の味ゆうべの夫婦喧嘩かな
通夜の灯をうけて柘榴の花のいろ
かけ違ひあまる釦や油照
うたた寝のじいじ起こすな猫じやらし
春日なか鳩そつくりな鳩の影
手足外してマネキンの更衣
雨に濡れしづかに夜の薔薇になる
山盛りの枝豆がでる祝かな
やぶ枯らしのしがみついてる地球かな
生牡蠣をすすりてぐつと空迫る
*本著は著者より寄贈を賜りました。記して感謝申し上げます。