愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

しなだしん『隼の胸』及び『夜明』抄

『隼の胸』

さくらからさくらへ鳥のうらがへる

紙漉のをんなのかほもながれけり

夜を来る馬の輪郭星涼し

うたふとき鯨の鰭のやはらかし

『夜明』

屋根のびてきて屋根の雪落ちにけり

半島も海もさかさに鳥の恋

水よりもみづみづしくて青蛙

没しはじめしうすらひの翼かな