『つむぎうた』は野中亮介の第二句集。「花鶏」主宰、「馬醉木」同人。俳人協会評議員。十五句抄。
遙かより帰るところの涼しくて
わだつみや月下に壱岐のひと雫
天の川胸にあるとき言葉美し
つまさきに力をこめて巣立ちけり
冬帽を握りしめたる正座かな
薫るものなければ天に朴咲ける
先の手の万の指先落花追ふ
春の月桶をあふれて天にあり
母のほか汗して母の柩出す
純白の湯気立てて人愛すなり
呼ばるるを待つ秋冷のノブの前
乾かしてまた雨を行く遍路笠
麦笛を吹きそばかすを増やしけり
白墨のメニューの茸まだ籠に
どろどろと鰻を桶に落しけり
背広よりニットに移す赤い羽根 野中亮介【季語=赤い羽根(秋)】 | セクト・ポクリット (sectpoclit.com)