愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

野中亮介『つむぎうた』(ふらんす堂、2020年)を読む

『つむぎうた』は野中亮介の第二句集。「花鶏」主宰、「馬木」同人。俳人協会評議員。十五句抄。

遙かより帰るところの涼しくて

わだつみや月下に壱岐のひと雫

天の川胸にあるとき言葉美し

つまさきに力をこめて巣立ちけり

冬帽を握りしめたる正座かな

薫るものなければ天に朴咲ける

先の手の万の指先落花追ふ

春の月桶をあふれて天にあり

母のほか汗して母の柩出す

純白の湯気立てて人愛すなり

呼ばるるを待つ秋冷のノブの前

乾かしてまた雨を行く遍路笠

麦笛を吹きそばかすを増やしけり

白墨のメニューの茸まだ籠に

どろどろと鰻を桶に落しけり

背広よりニットに移す赤い羽根 野中亮介【季語=赤い羽根(秋)】 | セクト・ポクリット (sectpoclit.com)