『膚』は岩田奎の第一句集。「群青」会員。跋佐藤郁良、帯 櫂未知子。十五句抄。
耳打のさうして洗ひ髪と知る
旅いつも雲に抜かれて大花野
をりからの夜空の色の日記買ふ
仕舞ふときスケートの刃に唇映る
いづれ来る夜明の色に誘蛾灯
憲法記念日白馬白蛇みな死ぬる
枝剪つて鉈にみどりや梅雨ふかし
蚯蚓死すおのれの肉と交叉して
さざめきに麦酒をはこぶ映画祭
ただようてゐるスケートの生者たち
寒鯉を暗き八雲の中に飼ふ
落椿の気持で踏めよ踏むからは
河骨は鏡をなさぬ水に咲く
棗とは思ふかすかな雨の奥
擦過する馬身水澄みやまぬなり