愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2023-05-01から1日間の記事一覧

『沈黙の函』飯田マユミ(2023年、コールサック社)を読む

『沈黙の函』は飯田マユミの第一句集。俳人協会会員。「枻」同人。十五句抄。 影ひとつゆるがぬ真昼威銃 雁や掬へば消ゆる海の色 水滴の張りつくコップ原爆忌 セーターを着てやはらかき妻となる 金髪の弟のいる祭かな 寒紅は深紅生涯子を生さず 寒いのは羽を…

池田利子『蛍』(2023年、文學の森)を読む

十五句抄 白息を碁石に吹きかけ初手打つ 湯気あげて駿馬ぬたうつ春の泥 桜散る桜畳を厚くして 人に添ひ人に媚びざるつばくらめ 街の音消して泰山木の花 水底の拍動のごと泉湧く 大トマト日を溜め込みて熟れにけり 散骨船虹に向つて舵を切る たましひを擲つご…

いづれのおほんときにや日永かな 久保田万太郎 蜆舟水の重みも上げにけり 石井いさお それぞれがわたくしごとを雪の窓 谷口智行 産湯冴ゆ原初の忌をここにとどめ 同上 告げざりし恋もありけり枇杷の花 西村和子