『沈黙の函』は飯田マユミの第一句集。俳人協会会員。「枻」同人。十五句抄。
影ひとつゆるがぬ真昼威銃
雁や掬へば消ゆる海の色
水滴の張りつくコップ原爆忌
セーターを着てやはらかき妻となる
金髪の弟のいる祭かな
寒紅は深紅生涯子を生さず
寒いのは羽をなくしてしまつたせい
それよりもポインセチアが乾いてる
自転車の籠に花束五月来る
先頭は旗振るやうに捕虫網
陽炎なのか頼朝の影なのか
踵より降り立つ離島桜まじ
初夏や肩を揺らして弾くピアノ
塗りつぶす下絵八月十五日
石段は闇の入口曼珠沙華