むらさきが支へて春の虹立てり 細谷喨々
うすものの重り合ひて濃むらさき 山口青邨
紫は水に映らず花菖蒲 高濱年尾
地平線に一番近いラベンダー 前田弘
磨崖仏おほむらさきを放ちけり 黒田杏子
初なすび水の中より跳ね上がる 長谷川櫂
山晴れが紫苑きるにもひびくほど 細見綾子
むらさきふかめ葡萄みづから霧まとふ 野澤節子
サフランや映画は昨日人殺め 宇多喜代子
緑蔭や矢を獲ては鳴る白き的 竹下しづの女
白露や死んでゆく日も帯締めて 三橋鷹女
白地着て血のみを潔く子に遺す 能村登四郎
さるすべりしろばなちらす夢違ひ 飯島晴子
母の日のてのひらの味塩むすび 鷹羽狩行
寒き日や胸中白く城が占む 鍵和田秞子
雪中に白したたらす鷗の死 宇多喜代子