写真
祭笹立てて昼出る漁船かな 中西夕紀 丸まらず逃ぐ炎昼の団子虫 河原地英武 遠泳の肩つやつやと上がりくる 岩田由美 沙羅の花一つ拾へば一つ落つ 石田波郷 バス停のしんがりにゐる夕薄暑 德田千鶴子 一世紀生き抜きし身に桜満つ 岡田貞峰 天道虫彼より彼女そ…
国家は危険の中に生成する プラトン
名をすべての物から剥奪したい 裸眼のいたいたしさを以て直視したい 言葉は得体の知れない怪物であって その誘惑は人々を平俗化すること実に巧みである 僕は平俗化を恐れてゐる 沢木欣一 犀の角のようにただ独り歩め 『スッタ二パータ』
喬平のヴェネツィアグラス松島の五月の海に息吹き込めば
待つ身が辛いかね? 待たされる身が辛いかね? 太宰治 晩じるといふ里ことば稲の花 古川
夜雨寄北 唐・李商隱 君問歸期未有期巴山夜雨漲秋池何當共剪西窗燭卻話巴山夜雨時
昇平多樂事
パラグライダー若葉の空を画布とせり 渡井一峰 大鍋に作るカレーや夏兆す 甲斐ゆき子 切岸や幾千の根の滴りて 三浦晴子 大気球ゆつくり揚がる立夏かな 福井信之 明易や一人の旅の波のいろ 芳井ひろみ 制服も靴も大きめ薄暑光 竹原静子
綿虫や病むを師系として病めり 綾部仁喜 病む父の目覚め語りに雪積る 深見けん二
青い闇秋はそこからやってくる 十一 あらゆる詩古ぶ湯冷めの胃袋は 横井来季
レクイエムのティンパニーの打撃音ははばたき、荘厳にして、神々しく、驚愕したわれわれの耳に、ある存在の到来だけを告げるのだった。それはまさにスタンダールの言葉によれば、確かに他界と関係する存在だった (モレ『神モーツァルトと小鳥たちの世界』)
立冬の雲茜のせ母をのせ 川﨑雅子 てのひらに小さなくぼみ冬の蝶 なつはづき 初山河二足の草鞋ひとつ脱ぎ 久留米脩二 美しき嘘ひとつつき火の恋し 渡井恵子 海と川の境を秋の縞の魚 植田密 秋深しシウマイ匂ふ新幹線 鹿又英一 十月の太鼓は杜をふくらます 南…
北上川の水は黒の寒天よりももっとなめらかにすべり獅子鼻は微かな星のあかりの底にまっくろに突き出ていました。「二十六夜」宮沢賢治
2025年の結社誌・総合誌への寄稿を掲げる。 「湧」に「『湧』の俳句」を毎月寄稿。 「馬醉木」に一、三、五、七、九、十、十二月号に「特別作品展望」を寄稿。 「俳句界」に四月号の「北斗賞競詠」に「去年今年」七句、エッセー。 「俳壇」九月号に「水…
杜甫の七言絶句『貧交行ひんこうこう』。 1500年前に生きた杜甫も同じことを嘆き、つまり1500年前から人の世なんて所詮こんなものなのだと教えられる一編。 翻手作雲覆手雨 紛紛輕薄何須數 君不見管鮑貧時交 此道今人棄如土 〈読み下し文〉 手てを翻ひるがえ…
狐火や指輪は投げつけて返す なつはづき 復元の書斎から雪よく見ゆる 遠藤容代 嬰の蠅はらうて母の若きこと 篠原隆子
木のあいさつ 石原吉郎ある日 木があいさつしたといってもおじぎしたのではありませんある日 木が立っていたというのが木のあいさつですそして 木がついにいっぽんの木であるとき木はあいさつそのものですですから 木がとっくに死んで枯れてしまっても木はあ…
未来おそろしおでんの玉子つかみがたし 山口優夢 ストーブや一秒ほどの夢を見て 西村麒麟
目が覚めて生きてをるなり日日草 鈴木貞雄 謹啓のあとやや無礼冬ぬくし 柴田佐知子
一つ一つ祈りをこめて袋かける梨の小さき玉ひかりをり 岡田元子 入院をするとふ話子にすれば声あげて泣く二児を抱きしむ 同上 咲き極む白菊の花芯のほの蒼く触れたる髪ににほひ深まる 同上
萩映す小太刀の峰に薬指 石倉俊紀 点棒の赤は夜長の一万点 水須ゆき子 瑠璃色の蜥蜴縄文より来る 田中知宏 後ろ楯失くす銀輪秋時雨 藤澤美恵子
愛人はアスパラガスの白い方 木野清瀬 銀河って渦だろ卵かき混ぜろ 山本純子
生もよし死もよし若葉更によし 高岡智照檸檬は鳥類てのひらで眠る 秋尾敏
天麩羅の衣は茄子の紫に 大井正志おけら鳴く忘れろ忘れろ忘れろと 藤崎幸恵出目金を狙へと姉のけしかくる 石川暘子半袖がぽつぽつとゐる文化祭 北大路翼 クロワッサンの匂ひの中に月の駅 木村厚子
茄子漬は尾張の夜の空の色 半澤登喜恵 光りつつ濡れつつナイフ桃を剥く 松野苑子 屍の重なる墨絵燕来よ 紅葉栄子 啄木のローマ字日記曝しけり 山田富士夫 坂にみな名のある町や断腸花 同上
箸を置く祖母苦瓜を端に寄せ 望月香織 木炭の裸婦黒黒と秋立ちぬ 氏家直子 桐一葉完成のため絵を汚す 小久保佳世子 柘榴割れれば落武者の顔並ぶ 竹内宗一郎
校庭と刈田の境警官立つ 今井聖 占ひ師師走の顔を覗き込む 依田善朗
緋牡丹の奥の翳りの火壺めく 宮原榮子大綿のたとえば母の寝息かな 青木栄子
火を恋ふは焔恋ふなり落葉焚 橋本多佳子 冬麗やわが心中のスナイパー 山本鬼之介
湯冷めして何やらレトルトの気分 橋本喜夫 頁繰るたびに冬蝶思ひだす 岩淵喜代子 冬雲や焼肉を締めくくるガム 斉藤志歩