愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

写真

奄美大島

節分

大空に根を張るつららだと思へ 櫂未知子 初磐梯裳裾を湖に濡らしけり 佐久間晃祥 初日受く日毎に祈る神の山 岡崎宝栄子 薺打つひとりに余ることばかり 徳田千鶴子 人日の手に頂きて新刊書 望月百代 添ひ寝して子に初夢を蹴られけり 五十嵐かつ 富士見ゆる所…

寒波来る

鷹とめて瑞山の春夕映えす 飯田蛇笏 春さだかわが前に波崩れたり 大野林火 竹の穂の春立つ光ふりこぼす 水原秋櫻子 早春の門すこしぬれ朝のあめ 及川貞 早春の心光りつ多摩に沿ふ 中島斌雄 梅二月ひかりは風とともにあり 西島麦南 山がひの杉冴え返る谺かな …

四色丼。

梅雨深しサウナに銀の砂時計江見悦子 こだまして雪の崩るる窯火入れ 岡村千恵子 鷹渡るまだ波がしら闇のこし 同上 ひかりつついちまいとなる大干潟 同上

冬至

寒垢離に滝団々とひかり落つ山口草堂 ゆめのなかへ道折れてゆく寒念仏 森山夕樹 大樟の走り根焦がす追儺の火 下村ひろし

親子

「ただいま」と言えば子ら寄るけふ外に門松飾つた頭を撫でる

板橋宿

酉の市小さき熊手を値切りけり 正岡子規 曇りきて二の酉の夜のあたたかに 久保田万太郎

フルムーン

大いなる椿一樹がわれとわが妻なりしひとの墓を覆へる 永田和宏 わが歌の初句が出なくて講演のそのあたりより早口となる 同上 チャート式数Ⅰ数Ⅱの広告の前に待ちをり午後の電車を 同上 風つよきランス大聖堂いづこより神の嗚咽はきこえくるかも 水原紫苑 微…

紫荊の実

依頼者と方針合はぬ夜や幾度寝返りしても心昂ぶり 上司より命ぜられたる初仕事 依頼者の指示の誤り指摘して口論となるその夜眠れず

冬の月

みちのくのやまの出湯に一夜寝てはかなきゆめをわがみたるのみ 小池光 あけつぱなしの手は寂しくてならぬ。青空よ、沁み込め 前田夕暮 明るさに怯むほどなり人声も光を帯びて空を行き来す 伊藤一彦 学徒出陣七十五年後の今日この日の寧けき空に後の月見つ 橋…

シクラメン

油手を拭くやボーナス配られつ 黒坂紫陽子 忘年や別れてよりは川に沿ふ 岡本眸 古暦水はくらきをながれけり 久保田万太郎 今年わが虹を見ざりし日記了ふ 福永耕二 掛乞や商がたき連れ立ちて 根岸善雄 掛乞に鸚鵡が口をはさみけり 大網信行 暮るるまで木霊を…

新宿ははるかなる墓碑鳥渡る 福永耕二

初時雨

冬ふかむ父情のふかみゆくごとく 飯田龍太 冬深く墓掘る者は低唱す 有馬朗人 滾々と子の語わき出て深まる冬 轡田進 踊る灯や汝も雪焼の頬燃えて 沢田緑生

入りて問ふ右も左も牛小屋にてにれがむ牛の我を見上ぐる 立ち上がるおほどかにして肥えし牛かかる善き牛に触れしなかりき 厚着して人等働く冬早くその冬長き国の思ほゆ 時雨する伯耆の国に一夜寝るその大山に雪ふるといふ 冬の森の中に古りたる一木ありその…

はつふゆの月

花をへし桜の若葉朱になびく湖の光に遊ぶ日もなし 土屋文明 鴨一羽ゆたけきは幾年ぶりなるぞその青首を割きつつ食らふ同上 追悼斎藤茂吉 ただまねび従ひて来し四十年一つほのほを目守るごとくに 同上

冬の月

砂つみて去りゆく舟の上にして炎は人の間よりみゆ 土屋文明 杉の下に寺あることの変らねば落ちたる水のとはに清しも 同上 谷いでてここにせせらぐ水の声一夜ねむらむたのしかりけり 同上 雨のふる小野をひねもす見て居りぬ暮方になりて光さしたり 同上

江成常夫 

鎮魂の心、弔う心をもって写真を撮ってきた。 社会や歴史観、それが奥にないと、相手をどう撮ったらいいかわからない。 見えない部分を映し出すのが写真ですから。

ほととぎす痛恨常に頭上より 山口草堂 木から木へこどもの走る白雨かな 飴山實

立冬

柳吹く九月九日君を訪ふあるひは永きわかれかなしみ 土屋文明

秋惜む

わが馬酔木ほの紅ににほひ来て朝なあさなのたぐさなかりけり 春暑き午後の光のてりつけて青草の土手に潮みちたたふ 向ふ岸に淡き夕日のさし居りて草に満ちたる潮に下りゆく 東みなみの空に浮く雲かがやきて東みなみの風は吹くかも 以上 土屋文明

弓張月

降りてくる春の帽子を押さえつつ 黛まどか祈るべき天とおもえど天の病む 石牟礼道子

上弦の二

徘徊の母を日傘に包み込む 江藤隆刀庵 雪がふるおとぎ話をするやうに 赤繁忠宏 空也の声空也を離れ陽炎へる 岩本茂

三日月ロック

雲は雪の芯となりゆき昼灯す 安藤喜久女

返り花

解体のビル折れ曲がる残暑かな 那須淳男 肘打ち合うて敬老の日の別れ 平子公一 一人遊びに慣れてトマトを丸かじり 西川織子 火の如き望郷夾竹桃咲けり ほんだゆき 木ノ実落ちつぐ胸奥の谺かな 同上 波の岩波立たぬ岩秋涼し 小田司

エールビール

転ぶ子にちちんぷいぷい花野行く 徳田千鶴子 長き夜や気づけば遅きことばかり 同上 稲びかり言葉探して会ふ人と 同上 敗戦日生きて愛さず愛されず 渡邊千枝子 髪黒き母より知らず秋袷 同上 大き帆に校章掲げ航く九月 小野恵美子 喧嘩神輿駆けて海道沸騰す 同…

茂林寺

分福の福の字は化け狸かな 分福の福の字の化け狸かな

suzumeya coffee

白木蓮咲く水音の空のいろ 梶原三邦 永日や波のかたちの皆違ふ 鈴木貞雄 映像の癌美しや寒燈 高野ムツオ 夕空や群れて淋しき曼珠沙華 徳田千鶴子

八ヶ岳

鈴虫や闇の舞台をほしいまま 大高霧海 馬追のみどり透くまで鳴き通し 及川茂登子 初萩のしだれはやがて白き風 佐々木青柚 馬柵いつか花野の柵となつてをり朝雄紅青子 それぞれに違ふぬくもり秋灯 渡部美知子 金継ぎの金の細さよ二日月 辰巳奈優美 野分晴鼻を…

室の八嶋

松虫の鳴く夜は松の匂ひかな 沙平

下り簗

また違ふ香水過る夜会かな 吉田千嘉子 うしろよりよき風のくる土用灸渥美尚作 朝の蝉井戸の周りの濡れて居て 栗原憲司 河馬がばと炎天の水割りにけり 谷口智行 円陣を組んで噴水立ち上がる 頓所友枝 巡礼のリュックをおろす泉かな 大北昌子 子の肩のてんたう…