『飛英』は片山由美子の第六句集。香雨主宰。 15句抄。俳人協会常務理事。本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。
八月や花はひかりを引いて落ち
頷いてゐてうべなはず胡桃割る
きしむまで神輿締め上げ豊の秋
帆を張るがごとくに幟浦祭
秋澄むや散らばる島の星座めき
若水の刃のごとき光かな
くれなゐは火の色ならず落椿
梅雨に入る風にけものの匂ひして
如月や卵溶く音かろやかに
落花踏みゆく白波を踏むごとく
蝉声やかがやくほどに地の踏まれ
一声もなく大空へ巣立鳥
たましひを枕に沈め夜の秋
久女忌や咳きこめば火を吐くごとし
ちるとなく散りとめどなくちる桜