愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

『飛英』片山由美子(2019年.角川書店)を読む 

『飛英』は片山由美子の第六句集。香雨主宰。  15句抄。俳人協会常務理事。本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。

 

八月や花はひかりを引いて落ち

頷いてゐてうべなはず胡桃割る

きしむまで神輿締め上げ豊の秋

帆を張るがごとくに幟浦祭

秋澄むや散らばる島の星座めき

若水の刃のごとき光かな

くれなゐは火の色ならず落椿

梅雨に入る風にけものの匂ひして

如月や卵溶く音かろやかに

落花踏みゆく白波を踏むごとく

蝉声やかがやくほどに地の踏まれ

一声もなく大空へ巣立鳥 

たましひを枕に沈め夜の秋

久女忌や咳きこめば火を吐くごとし

ちるとなく散りとめどなくちる桜