『航路』は小野恵美子の第五句集。馬醉木同人。15句抄。俳人協会幹事。本著は著者よりご恵贈賜りました。記して御礼申し上げます。
白南風の帆やふるさととなす他郷
好晴の画布のうちそと落葉降る
邂逅の大き手套につつまれぬ
独り居も佳しや六日の菖蒲風呂
ナイターの沸騰点の中に居る
春祭べつかふ飴に海透けて
浅春の帽を支へて耳二つ
その中に母を顕たせて花吹雪
白玉や世に遅るるといふ寧さ
降誕歌火影が階を昇り来る
冬木の芽海鳴りは人悼むかな
櫂挙げて高き日讃ふ海開き
海道の風を畳めり白日傘
桟橋は彼我逢ふところ南風吹く
海岸に蛇口屹立して晩夏