愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

にぎやかに盆花濡るる嶽のもと 飯田蛇笏

脳味噌をたたらふむなり風邪の神 阿波野青畝

ほうたるの草を離れて遊行かな 京極杞陽

杖とめて光陰花とわれのひま 皆吉爽雨

水澄みて水澄みて人新たなり 星野立子

墜ちてゆく 炎ゆる夕日を股挟み 三橋鷹女

花の雲抜く晩年の飛魄かな永田耕衣

父と兄癌もて呼ぶか彼岸花 西東三鬼

いくたびも花冷いへり旅の妻大野林火

帆船にムンクの顏のある白夜 石原八束

玉梅に魂魄の闇ありにけり鷲谷七菜子

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秋雲一片遺されし父何を為さむ 福田蓼汀

死ねば格好つけようもなし裕次郎忌 楠本憲吉

うすらひの張りためらへる如くなり 深川正一郎