『麦生』は橋本榮治の第一句集。「枻」代表。十五句抄。序 林翔 栞 野中亮介 装幀平子公一。
湯をかけて艫綱を解き漁始
寒柝の仕舞の一打われへ打つ
初蝶や児が追ふほどの速さにて
まつすぐに降る雪はなく積りをり
双肩に月光重し裘
空いまも無垢の蒼さや仏桑花
翼もて覆ひきれざるものへ雪
冬耕のひとりとなりて生む谺
朝の日に画布の純白小鳥来る
縄跳の縄海光を切り止まず
魚に似て行く長梅雨の新宿区
旅衣手に軽ければ林檎買ふ
黄落やわが影いづこにもあらず
蕪蒸若狭は小橋よりしぐれ
仏桑花愛すとは血を流すこと