愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2023-09-10から1日間の記事一覧

上野一孝

さざなみの向こうに天守つばくらめ さかづきに酒なみなみと櫻かな 面魂とは蟷螂のそれにして 観音に胸のふくらみ閑古鳥 万緑に胸うつくしき弥勒仏 水太く落ち滝として立ち上がる 滝の水落つるとも石走るとも

橋本榮治『麦生』(1995年、ふらんす堂)を読む

『麦生』は橋本榮治の第一句集。「枻」代表。十五句抄。序 林翔 栞 野中亮介 装幀平子公一。 湯をかけて艫綱を解き漁始 寒柝の仕舞の一打われへ打つ 初蝶や児が追ふほどの速さにて まつすぐに降る雪はなく積りをり 双肩に月光重し裘 空いまも無垢の蒼さや仏…

石蔦岳 『岳』及び『虎月』抄

涅槃西風御手洗団子蜜垂らし 天と地の境は浅葱雪の果 陽炎のくるぶしあたりより立てり 晩餐に豚の耳削ぐ五月祭 舎利塔の天に宝珠を抱く夏 胎内のものの眠れる繭を掻く 夏花摘夕日のやうな朝日つれ 初富士や箔一枚を置くごとし 汗滂沱たるおのが身のゆらぎを…