愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

根岸善雄『光響』(角川学芸出版、2011年)を読む

『光響』は根岸善雄の第四句集。「馬酔木」同人。十五句抄。

 

蒼天のひかり聚めて冬桜

ひつじ雲うさぎ雲草笛欲しや

かぎりなく柳絮睡りの中を飛ぶ

梅雨穂草水より淡きゆふべ来る

湿原の天眩しめば鶴鳴けり

たまきはる螢火の燃え尽きざるや

碧潭の底まで透くる鵙日和

鱏の背に銛創しるし朝曇

月代の牧に邯鄲こゑ湧ける

山月に霧氷のひかり響きあふ

大鷹のかげ落しゆく結氷湖

冬滝の細りて勁し夕月夜

鹿渉りゆく月明の結氷湖

落葉松のかげ靠れあふ深雪晴

雪林におのが踏みあとのみの径