ずずだまの穂にうすうすととほき雲長谷川素逝
荒削りとも言える力動的な美が自然の大景であるのに対し、人事句の完成美。前者はピカソ、男時。後者はクリムト、女時。
世紀末は女時、世紀初頭は男時になるのではないか。
野を焼く火百済の山を低くせり
越南
河内(ハノイ)とは佳き名の街の蓬餅
縄跳びをくぐれば春の灯のともる
独楽廻す大勢の子が湧いて来て
秋風の吹きて黄河に別れけり
爽やかに曲りて細し絹の道
流星や駱駝の瘤に跨がつて
爽やかに話す二人の如来かな
オアシスの人に懐けり羽抜鳥
瓢箪に陶淵明の詩を刻む
陽関や天馬たらむと馬肥ゆる
洛陽
顔回の鬚は短し爽やかに
いづこにも竜居る国の天高し
竜二頭相たはむれて淵に入る
鱶の鰭ふんだんに食ふ立夏かな
岩燕その巣の甘き夏立つ日
泳ぎ来て椰子の実を割る真二つ