『息災』は染谷秀雄の第三句集。俳人協会理事・事務局長。「秀」主宰。十五句抄。
一滴を溜めて間遠の添水かな
翔けあがるときの雫や鳥帰る
新涼やものみな高く吊したる
一方のその手冷たし師は病みぬ
渡し場の旗の高さよ更衣
ゆるやかに廻りて戻る釣忍
葭叢の枯れ始めたる水の色
木村屋のいつもの席に秋の暮
広々と月の高さや十三夜
一片も散らざる翳り夕桜
白南風や水を流して魚市場
括りたるものをあまたに菊日和
街道に干してしろがね春鰯
風すこし出て花影を揺らしけり
一滴の水を落として蜻蛉生る
*本著は著者より寄贈を賜りました。記して御礼申し上げます。