愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

2022-04-29から1日間の記事一覧

川端康成『春景色』

竹林は日光の裏から眺めるのがいいことを彼は発見した。日のあたるおもてから見ては駄目である。

『伊豆の踊子』より

海はいつの間に暮れたのかもしれずにいたが、網代や熱海には灯があった。肌が寒く腹が空いた。私はどんなに親切にされても、それを大変自然に受け居られるような空虚な気持ちであった。明日の朝ばあさんを上野駅まで連れて行って水戸までの切符を買ってやる…

伊豆の踊子

道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追ってきた。