愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

入りて問ふ右も左も牛小屋にてにれがむ牛の我を見上ぐる

立ち上がるおほどかにして肥えし牛かかる善き牛に触れしなかりき

厚着して人等働く冬早くその冬長き国の思ほゆ

時雨する伯耆の国に一夜寝るその大山に雪ふるといふ

冬の森の中に古りたる一木ありそのかやの木に来りたたずむ

一日暖かに一日の命養はむ海はめづらし海に息づく

おんな亀山に立つ木のさまも道道に見つつこひ行く赤名のたむけ 

うきうきと声はずませて我妻の手をさへとりて導きましき

ひそかなる喜びごころ湯抱に若葉の中の君いま思ふなり

以上土屋文明
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