『毫』は小野あらたの第一句集。「群青」所属「玉藻」編集長。序 佐藤郁良、跋櫂未知子、帯星野高士、装丁中原道夫。十五句抄。
掌に泉の雲の収まらず
上流に雲の淀める韮の花
山麓は湖に映らず夏燕
麦蒔や一歩一歩を柔らかく
動き出すまで掌のがうなかな
プールより仰ぐ校舎の高さかな
稲妻や図書館に本古びゆく
冬木立山の裏側より汽笛
雪解の光る脚立を昇りけり
春風やパンの匂ひの南口
曇りたる眼鏡嬉しき夜食かな
捲りたる袖戻りゆく磯遊び
山脈の間に霧の引きゆけり
剪定の木を一回りして終へる
沖遠く影の動かぬ若布刈舟
頂へ手摺の続く涼しさよ