愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

酒 仕込み

寒柝の音花街に移りけり 蟇目良雨

いくたびも鮪を跨ぎ御慶かな 同上

将門の日照雨ぱらつく祭かな 同上

良寛の書の余白なる涼しさよ 同上

夕暮れの影をゆたかに芒の穂 同上

やはらかな十一月のものの影 同上

おんどりがめんどり庇ふ秋桜 同上

桂郎忌割箸を割る真つ二つ同上

小春日のたとへば母の膝の上 同上

手に熱し震災の日のねぢまはし 同上

立雛のうしろの闇に手を入れる 同上

あふれきしごとくにしだれざくらの芽 同上

立上がりつつ走りたり芦焼く火 同上

花街に抜け道ありぬ額の花 同上

近寄りてひとつになりし蛍かな 同上

山の湯の桶よくひびく五月かな 黛執

墓洗ふついでの恨みつらみかな 同上

夕雲にあえかなる朱や業平忌 同上

田の端に月忘らるる踊かな 同上

山茶花の日向に母を忘れたる 同上

叡山に夕映のこる飴湯かな 同上

一島を山とし見れば笑ひけり 見留貞夫

ビル建ちて四辺もつとも冬ざるる 同上

見上げては遺影になじむ秋灯 同上

幹太き冬木を連ね男子校 同上

眠るたび増えゆく秋のヨットかな 同上

 

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