愛ね、暗いね。

あるいは小さな夜の曲

安里琉太『式日』(左右社、2020年)を読む

式日』は安里琉太の第一句集。「群青」「滸」同人。十五句抄。

 

悴みて水源はときじくの碧

古巣見てきて雲のおもての暮れすすむ

山霧の粒立つて日に流れをり

はんざきはみづを匿ひ十二月

涼しさや石より雲の彫り出され

さざなみにプールの晴れてきたりけり

空瓶は蜥蜴を入れてより鳴らず

くわいじゆうはひぐれをたふれせんぷうき

瓢の実を大げさに吹くはうが兄

鶉飼ふ皿のうすずみ櫻かな

式日や実石榴に日の枯れてをる

草笛のいつより濡れてゐし指か 

春昼や声の吹かれて橋の上

霧深く我にしたがふ霧のあり

海鼠噛む風蝕の日を高く吊り