『喜寿』は曽根薫風の第一句集。「馬醉木」同人。俳人協会幹事・同岡山県支部顧問。序 德田千鶴子。十五句抄。
定まりて子にひき渡す凧の糸
母匂ふ陶枕かたく冷たくも
若水の上に日の差す岩の上
初電話胎児が腹を蹴るといふ
節分の雪や板書の手を止めて
画用紙に砂鉄のをどる夏休
名を呼ばれ声を限りに卒園す
萩の雨棺に父の傘をかけ
花束を抱き船を待つ卒業子
諸人と手話の聖書を斉唱す
不揃ひの巣箱に太くクラスの名
薙刀を背に夏袴登校す
傾くも身じろぎもせぬ鉾の稚児
名のみ知る姉の小さき墓洗ふ
川舟の棹の触れたるこぼれ萩
*本著は著者より寄贈を賜りました。記して感謝申し上げます。